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活動報告の見学会

活動報告 2016年 12月3日「鍛刀見学会に参加して」

専門昼1992年機械科卒 松岡美織

前回「古(いにしえ)の武術、技術を訪ねて」に続き、今回も同窓会の企画に参加させていただきました。

「鍛刀見学会」は大変好評のため毎年12月の第一週の土曜日、恒例になった見学会です。

昨年はどうしても参加ができず、とても、とても、とても楽しみにしていた見学会でついに!見学できました。

本学1987年 金属科をご卒業された刀匠 佐藤 重利先輩の鍛錬所の見学です。

佐藤先輩は海外でも人気のある刀匠で、銘は「八王子住 重利」で刀に「重利」と刻まれてありましたらそれは佐藤先輩がお作りになられた刀です。

見学会では小さな刃物の焼き入れ、焼き戻し、砥ぎまで体験させてくださいます。

この体験がまた中身が濃く、ただの体験だけではなく、鉄の歴史、鉄の組織から実際の体験まででき、特にたたら炉や、ダマスカスの剣、デリーの鉄柱などのお話しはとても興味深く、あまりにも深すぎて一言では説明ができませんが、鉄づくりのルーツや鉄の神秘を知る事ができました。

ジブリ映画の「もののけ姫」に出てくるたたら場、女性が足場を踏み込んでいる場面です。

そのお話しもしてくださり、ジブリの鉄の知識にも驚かされますが、それほどに昔の鉄の製鉄技術はとても優れていたようです。

また頂いたテキストなどはあまりにも詳しく、一冊の専門書としても使えるほどです。

テキストは、佐藤先輩の先輩の平山先輩(ただし年齢は後輩だそうです。(笑))が作成され、年々内容がパワーアップしているそうです。

この先輩後輩のつながりが羨ましいですね。

鍛刀見学会に参加

職人という業種になると思うのですが、私は職人の方は技術中心だと思っていました。

けれど佐藤先輩の凄さは技術だけではなく、鉄の歴史から鉄の組織まで大変造詣が深いのです。鉄などで知らない事はないほどに何でもご存知でいらっしゃいます。

いきなりチョークで化学記号を書き始めて説明してくださいましたり、鐵-炭素系平衡状態図はとても重要な図であり、実はこの図は100年以上前からあるとても重要な図なのだそうです。

学術的に裏打ちされた解説には、説得力があります。

鉄の温度は重要であり、誤差の幅がとても狭いと思いました。

佐藤先輩は、色など炎の形で温度が分かるそうです。

1℃単位以内で分かっていらっしゃっています!

私達素人には同じ色などに見えるのです・・・が。

鍛刀見学会に参加

佐藤先輩はなぜ改めて専門学校に入られたのかとお伺いしましたら、お師匠様のお父様が、現東京大学の先生でいらっしゃり、組織の勉強も必要との事で改めて現工学院大学専門学校にご入学されたとお伺いいたしました。

技術だけではなく知識、歴史学もお持ちで、その結晶が刀として具現化されていました。

更には「美」まで合わせ持つこれまた神秘的なものでした。

私が佐藤先輩を見て一番驚いたのが、もちろん技術、知識も凄いのですが、何より楽しんでいらっしゃる所でした。

説明をしてくださる時も、実演を見せてくださる時も、普段の時も、とにかく何でも楽しんでされていらっしゃる所です。

ただ、ただ純粋にお好きなのだと思います。

それとちょっとお茶目な所がありまして、そんな所も含め、精神の高さをとても感じました。

他にも極めた方にお会いした事がありますが、その方も同じように本当にただただ、純粋にお好きで楽しいのだと思います。

だからこそ極められるのではないかと思いました。

何かを極める、本当に厳しい道ではないかと思いますが、本当に何かを極めた風景と私達の今見ている風景とは違う風景なのだと、自分もそのような風景を見てみたいと思いました。

鍛刀見学会に参加

焼き入れ、焼き戻しをした後、刃物を砥ぐのですが、まったくもってこれは本当に切れるのか?と不安になりましたが、やはり佐藤先輩が砥ぐと光りだし、切れるようになりました。

やはり佐藤先輩の技術は凄かったです。

出来た時の感動ったら嬉しくてなりませんでした。

一つだけの自分の刃物です。

自分で作ったからこそ、とても愛着が湧きました。

ここで詳しくお話しするよりも、実際体験して頂いて、説明を頂いた方がいいと思いますので、是非とも皆さん見学会に参加してみてはいかがでしょうか!

女性には嬉しいプレゼントがありました☆

佐藤先輩のお師匠様のカミソリは2年待ちだそうです。

気が遠くなる年月ですが、それでも待っても欲しいと思うほど凄いのですね。

見学会の後、年末でしたのでそのまま忘年会となりました。

他にも色々とご活躍されていらっしゃる先輩方がいらっしゃり、熱い想いをお話しくださいました。

その熱いお話しを伺い、自分は将来後輩にこのように伝えられる事ができるのだろうか。

後輩を導いていけるのだろうか。と不安になりました。

先輩とは、導いてくれる存在であり、助けてくれる存在であり、勇気をくれる存在であり、やはり憧れの存在でなければならないのだと思いました。

工学院大学専門学校は廃校になってしまいましたが、佐藤先輩方の時代は、東大の大学生にも劣らない技術と知識を持っていたそうです。

一流になられた先輩方がとても多いのです。

当時は辛い時もお互い仲間や先生が助けてくれ、辛いけれどとても楽しい時だったと皆さん笑いながらお話しくださいました。

皆さん、学科関係無くとても仲がいいのですよ。

現代はあまり人との関わりを敬遠される時代かもしれません。

けれど私たちは人と関わらずに生きていけません。

次の時代は私達が担うのです。

自分の幸せだけではなく、もっと広い眼で物事を考えさせてくれる、

そんな見学会でした。

と、熱く語ってしまうほど学びの多い見学会でした! そしてそんな先輩方がいらっしゃる専門学校に入って良かったと思いました。

鍛刀見学会に参加
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